現状

交通事故により脳脊髄液減少症を発症した場合、患者側に非がなくとも、脳脊髄液減少症の治療を認めていないことを根拠として、保険会社は支払を拒絶するケースが多くあります。また、事故後時間が経ってから脳脊髄液減少症を発症したり、長期間病名に辿りつけず、脳脊髄液減少症と診断がついたときには既に示談が済んでいるようなケースでは、被害者である患者は、因果関係の立証が更に困難になり補償を受けることが難しくなります。

また学校生活における事故等が原因で脳脊髄液減少症を発症した場合も、現在のところ、ブラッドパッチ治療が保険診療でないために、日本スポーツ振興センターの災害給付の対象とはなっていません。

ブラッドパッチ治療については、改善した症例は約70%にのぼり、子供においてはさらに改善率があがることが脳脊髄液減少症に取り組む医師から、データとして報告があります。しかしながら、患者および患者を抱える家庭は、一回30万~40万円かかるブラッドパッチ治療費のすべてを実費で支払わなければならず、高額な治療費を支払うことができないために、治療を受けたくてもあきらめざるを得ないケースも多々あります。

医学論争・社会問題

  脳脊髄液減少症については、医学会では、「ブラッドパッチ治療や診断方法が不明確で、正確な患者数も把握されていない」という多くの医師がおり、脳脊髄液減少症の発症原因や病態などを巡っても論争がおこっています。医学会での混乱だけでなく、2006年には、脳脊髄液減少症を交通事故の後遺障害として認める司法判決がでるなど、脳脊髄液減少症をめぐる問題は社会問題化しています。

「混乱を科学的に解明し、医学的にも社会的にも貢献できる」ものにするために、「だれがみても納得できる診療指針(ガイドライン)」の作成を目指し、2007年に厚生労働省による研究班が研究代表者 嘉山孝正 山形大学医学部長のもと発足しました。

しかしながら、残念なことに3年間で科学的根拠に基づいた診断基準を作るという目的で発足した研究班は、その期限である2010年、診断基準を作成するのに必要な臨床症例が足りないことを理由に、研究を継続する考えを明らかにしました。このような中、2010年に行われた診療報酬改定には間に合わず、脳脊髄液減少症の有効な治療法であるブラッドパッチには、現在でも保険が適用されていません。
保険適用を目指して

多種多様な苦しみの中、患者は長く待てない、早急に保険適用を!と、2010年4月 
長妻厚生労働大臣に、脳脊髄液減少症ネットワーク架け橋、他3つの患者団体は署名を提出し早急な保険適用を求めました。長妻厚生労働大臣は、脳脊髄液減少症の検査を保険適用にすることを明言し、またブラッドパッチ療法についても2年後の保険適用を検討しているとの見解を明示しました。

現在すすめられております「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する調査研究」の症例数が今後増えれば「診断ガイドライン」が延長の研究期間3年を待たずに、2年以内にまとまる可能性もあり、そうした場合には2年後の診療報酬改定で保険適用が判断されることになります。 症例数が今後増えれば につきましては、2010年8月に臨床症例数が100症例に達したとの報告がありました。また、研究期間3年を待たずに につきましては、研究班の期間は一律に3年と決められていますので延長する場合も3年と決定されています。

しかしながら、懸念されることが2点ほどあります。

1.「研究班」は「脳神経外傷学会」の診断基準に準じてガイドラインを作成する可能性が高いため、今のままでは「保険を適用される患者は約数%」、つまり、多くの患者には当てはまらない診断基準が作成される可能性があること。

2. 2010年度中に「ガイドライン」を作成し、厚生労働省に保険適用の申請をしないと、2012年の保険適用に間に合わない可能性がでてくること。

このような現状の元、2年後の診療報酬改定での保険適用を確実なものとするためには、この作成途中のガイドラインが患者に対して厳しいものにならないように、より多くの患者を救うものとなるように、早急に患者および患者会からの研究班への働きかけをしていく必要があると考えています。

平成22年9月作成

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